「中国の会計と日本の会計はどこがどう違うのですか?」
よく聞かれますが、的確にお答えするのは難しいので、わかる範囲でお答えすることにしています。中国の企業会計準則には、「発生主義」が記されておりますから、日本と同じように「発生主義会計」が行われているとお思いの方も多いと思います。ところが実務の現場では、「発票」に基づく会計が行われることになっています。つまり発票の発行と受領を売上と費用の計上基準とする会計です。
■発生主義会計と現金主義
会計現金の収入や支出に関係なく、収益や費用の事実が発生した時点で収益や費用を計上する処理方法が発生主義とされています。収益と費用を現金の受け渡し時点で認識する現金主義とは計上時期を異にするものです。これらの会計はそれぞれ「発生主義会計」「現金主義会計」と呼ばれています。
中国では発票に基づく会計が行われますが、「発票」は「領収書」と訳されるため、現金主義と解されることもあります。また、収益や費用の発生を発票で把握すると解することもできます。
■発票と納品書、請求書
発生主義で会計処理を行うためには、発生の事実を正確に把握する必要がありますが、中国で取引の発生を具体的に確認することは容易ではありません。
日本では納品書、請求書、領収書を基本に発生を把握する習慣がありますから、どこの企業でもこれらが存在しております。一方、中国は、「発票の発生」と「発票の受領」を元に会計を行いますから、発票の発行と受領が売上、仕入、費用の計上基準になります。発票は発票管理弁法により、取引の事実を証する証憑と定められています。もちろん、法定されていますから使用も強制されています。納品書、請求書の使用は一般的に普及していないので、発票を使用しなければ、発生を捉えるのは大変難しい作業になります。
日本の本社が要求する発生主義に基づく会計を、中国で簡単に実現できない理由も、そこにあります。