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出資持分譲渡に関連する税金

出資持分譲渡に関連する税金

■出資金評価を巡るトラブル

今回のテーマは出資持分譲渡に関係する税金です。
中国事業を展開する日系企業は、企業の売却、買収の際、現地の税法に基づいた課税に注意する必要があります。下記はある企業のトラブルを説明したものです。

日本企業A社は、上海市郊外で外資独資(甲社)を設立し、工場を経営していました。そして、人件費の上昇などの影響で業績が思わしくなくなったことを受け、上海からの撤退を決めました。その際、運よく、甲社を買いたいという日本企業B社が現れましたので、撤退・閉鎖ではなく売却することになりました。
こうして、A社が所有する甲社の出資金をB社が引き継ぐことになりました。

A社が出資したのは30万米ドルでしたので、当初の取得原価である30万米ドルでB社に譲渡することになりました。
出資金の譲渡と決済は日本国内で行われ、出資金譲渡契約書を作成し、取締役会議事録を作成しましたが、上海での手続は何もしませんでした。

最近になって甲社に中国の税務調査があり、“出資金譲渡時点での甲社の出資金評価は6万米ドルまで減少しているので、A社には24万米ドルの譲渡益が発生している”と指摘されました。
さらに、甲社は撤退したA社に代わりA社の譲渡益にかかる企業所得税を代納するよう税務局から指導されました。

■売却時点で「出資金評価鑑定書」作成を

このような問題は、中国に進出する日系企業においてよく見られます。注意すべき点は、たとえ日本国内で締結された契約であったとしても、中国で設立された会社の出資金の譲渡であり、中国の税務局にも課税権があるということです。
譲渡先が中国企業の場合は支払者に源泉徴収義務がありますが、日本企業の場合、甲社を所管する税務局に申告納税する必要があります。
なお、外資企業の出資金譲渡にかかる企業所得税率は10%となります。国税発「1997」71号規定によりますと、譲渡益は「出資金譲渡益=出資金譲渡収入-出資金取得原価」が原則ですが、税務局は類似業種、同規模の企業の出資金譲渡額等を参考にしながら、当該出資金譲渡額を査定する権限を持ちます。
日本で行われる取引にも適用されますから、出資金譲渡にかかる税務トラブルを避けるためにも、売却時点の「出資金評価に関する鑑定書」の作成をお勧めします。