上海茂木咨詢有限公司

中国出向者と出張者の税務 その1・出向者

中国出向者と出張者の税務 その1・出向者

仕事の関係で勤務場所が日本と中国にまたがると、日本と中国の両国で税金の問題が発生します。最近の日本の税務署は、海外に進出した企業と個人からの徴税に積極的に見えます。数年前までは、海外進出した企業に対しては、自己責任とばかりに無視を決め込んでいましたが、最近は海外進出した企業と出向者や出張者に狙いを定めた税務調査を実施しているようです。最前線で戦っている企業と戦士を後ろから狙いうちしているようにも見えます。納税者にとっては“前門の虎、後門の狼”状態で、税務リスクでいっぱいです。

■中国出向者の課税

給与は現地法人で支給されていますが、従来日本で支給されていた給与との較差補てん金は「留守宅手当」として、日本本社からも支給されています。現地法人で支給される給与と日本の留守宅手当を合計して、月次で申告する必要がありますが、日本で支給される留守宅手当は、日本では課税対象外となりますので所得税は課税されません。

■4つのケースにおける納税

(1)日本本社が中国現地法人との給与条件の較差を補てんするために出向者に対して支給する給与
支給された給与の額は、日本本社の損金の額に算入できます。(法人税基本通達9-2-47)

(2)現地法人の給与をベースに支給し、日本で較差補てん金を支給する場合
中国国内で勤務した期間に応じ、現地法人で支給する給与と日本で支給する給与補てん金の合計額を中国で申告納税します。日本で支給する較差補てん金に対しては、日本の所得税は課税されませんが、日本で国内源泉所得と勘違いして源泉徴収するの間違いで、日中租税条約はあっても二重課税になってしまいます。

(3)出向者給与の全額を日本本社で支払う場合
勤務場所が中国の時、日本で所得税は課税されません。給与は勤務先で払うのが原則ですから、現地法人に所得の移転が行われたものとして日本本社では移転価格課税が行われます。さらに、中国においては給与の支給がなくても個人所得税を申告納税することになります。

(4)出向者給与の全額を現地法人で負担する場合
原則通り中国で個人所得税の申告納税を行うことになります。

出張者の税務についてはこちらをご確認ください。